「予後不良」と記されており四歳の子の病なる白血病は
~歌集「風に飛ばした」より
「こんにちは」 昨年の夏、久しぶりにやっちゃんのお母さんにお会いしました。
「やっちゃん、もういくつになりますか?」「9月に誕生日がきたら、今年で30になり
ます。」「えーっ、もうそんなに・・・」
白血病の治療を受けながらも体調の良い時は、すっぽりと帽子をかぶり、登園
していたやっちゃん。走り回るということは無理でしたが、クルクルとした大きい目
の愛くるしいやっちゃんの笑顔は、充分に元気でした。でも幼稚園を卒園し、小学校に入学したやっちゃんは、間もなく旅立ちました。
お母さんの話によると、「今でも命日になると、お墓参りをしてくれるお友達がい
るらしく、私が行くとビールやタバコがお供えしてあるんですよね」ということでした。きっと幼稚園か小学校の時のお友達なのでしょうね。やっちゃんとの短かった
日々を胸に刻んで、やっちゃんの分も生きている誰か、命の尊さをしみじみを思う
誰か。
お母さんに「やっちゃんのジャスミンが、毎年春になると咲くんですよ」とお話し
ました。そのジャスミンの苗は、やっちゃんが幼稚園に来ている頃、お母さんに
いただいたものです。お母さんも「幼稚園の下を通るとき、見上げると白い花が
みえます」と言われました。お母さんも私も、毎年ジャスミンの花を見て、やっちゃんのことを思い出していたようです。
「ジャスミンのたまりかねたるような紅ほころびて白き花は開きぬ」
古川典子
・今年もジャスミンは元気な若芽を伸ばしています。卒園式で、子どもたちにやっ
ちゃんのお話をしました。
子どもたちにも忘れられない人々との出会いを一つでも多く体験してほしいもの
です。